──────────────────────── 2005年2月22日 第23号 ┌──────┐┌┐ │ ┌──┐ │└┘ ミ シ ン の 『 そうだったのか! 』 └┬┘ │ │ 〜 ミシンの嘘・ホント、それって常識?! ─────┴─┴──────────────────────────── ◎本メルマガは等幅フォントが最適です ▼ 目次 ●ごあいさつ ●はじめての修理経験 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ごあいさつ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いつもご愛読いただいているみなさん、こんにちは! 今回からお読みいただいているみなさん、はじめまして! 島田ミシン商会の嶋田栄司です。 数あるメルマガの中から選んでいただき、ありがとうございます。 このメールマガジンは、 これからミシンを購入したい、 ミシンのことをもっと知りたい、 もっと上手に使いこなしたい… そんなホームユーザーのあなたが、誤った知識で後悔しないように、 ミシンの嘘・ホントの解明を通して、ミシンの常識や活用のヒントをお伝 えしていきます。 このメールマガジンが何かの役に立って、今まで以上にホームソーイング を楽しんでいただけたら最高です。 気に入っていただけましたら、お知り合いに転送してすすめてくださいね。 ▼バックナンバーはこちら http://www.shimada-mishin.com/mailmag/backnum.html ──────────────────────────────────── ■ はじめての修理経験 ──────────────────────────────────── 約2年のJUKI(株)での委託研修期間が終わり、ミシン屋に戻ってきました。 短い期間でしたが、組立工場や各種ミシンやアタッチメントの研修、工場診 断などのコンサルタント業務など、いろいろな部署を渡り歩いたこともあっ て、広く浅く身につけることができました。 JUKIでは縁がなかった扁平縫いミシン(カバーステッチ)についても、環縫 いミシンの専門メーカーであるペガサスミシン製造(株)に改めて研修を受 けにいくなどで、最低限必要な知識と技術を詰め込むことができました。 とはいえ、勝手がわかりませんし、ミシン屋に戻ってきて、すぐ一本立ちで きるほどではありません。しばらくの間、10年先輩になる兄について、お 得意先の工場などを回りました。 最初は何をして良いか、よく分からなかったので、兄の仕事を見るしかあり ませんでした。特に工業用刺繍機はちんぷんかんぷんだったので、一から覚 えるに等しい状態でした。 ◆ 販売方法の違い 実のところ、店に帰ってくるまで、工業用ミシン店の仕事がどのようなもの か、よく分かっていませんでした。それまで楽器の販売していた私は、同じ ような感覚で捉えていたのですが、ずいぶん勝手が違っていました。 工業用ミシンの場合、ミシンとモーター、脚卓が別売りです。もちろん、コ ンピューター制御のミシンはセット売りですが、汎用モーターで動かせるミ シンは各お店がセットを組むことになります。 ですから最初に、どの工程でどう縫いたいのかを確認します。内容に応じて、 必要な機能を持ったミシンをいくつか提示します。付帯設備が必要なら、そ れもリストアップします。 お客さまの要望に応じたテーブルを発注することもありますし、店で加工す ることもあります。予算が厳しいなら、モーターなどを組み替えて、値段を 抑えるようにします。 注文を受けてからミシンを組み立てるのですが、ただ組み立てるのではなく、 さらに試縫いをして、用途に応じた状態に調整してから納品します。 最初に「お客さまが必要なミシンを用意する」ことからはじめるのです。お 客さまが、すでにミシンを決めていて、それを納品したらいいと思っていた 私には意外でした。アドバイザー的な役目を果たさなければいけないからで す。 当時はJUKIのミシンでさえ、全てを把握していたわけではありませんので、 お客さまに尋ねられても、そんなミシンが存在するのかどうかさえ分からな いことが度々でした。(今でも勉強中です) ◆ はじめての実践修理 店でお客さまを待っていることはなく、ほとんどの仕事が外回りです。 縫製工場に1回の訪問で、数台のミシン修理を依頼されます。まだよく分か らないといっても、私も見てるだけというわけにはいきませんし、ごく一般 的な直線縫いのミシンの修理から始めました。 その工場ではニット製品を縫製していました。そこで目飛び(上下の糸が一 針ごとに、ちゃんと絡まないトラブル)修理を頼まれました。基礎は理解し ていますし、JUKIに居た頃、何度も分解して組み直した、一番簡単なミシン です。それなりの自信がありました。 縫っている人は熟練さんでした。単純ミスは、まずないでしょう。針を新し くして、すぐに針と釜の隙間をチェックしました。目飛びの場合、この隙間 が規定値より広いことがほとんどだからです。 見てみると目で確認できるような隙間ができています(正常なときは、0〜 0.05mmの隙間なので目では確認できない)。針と釜が重なるタイミング も通常よりズレているようです。これを直したら終わりだな、と考えました。 ネジが緩んでいる様子もないのに、どうしてこういう修理が発生するんだろ う?と思いつつ、メーカーで教わった通りの状態にしました。ちょっとだけ 不安もありましたが、慎重に作業したので理想通りの状態になりました。 意外と簡単だなと思いながら、兄の修理が終わるのを待っていました。 しかし、間もなく「まだ目飛びする」と呼び返されたのです。 ◆ まだ直ってないわよ!! 実際に縫ってもらうと、確かに目飛びが発生しています。再度隙間やタイミ ングを確認しましたが、正常値になっています。念のため、もう一度最初か らやり直しましたが、結果は変わっていません。私には、前より悪くなって いるようにさえ感じました。 「え〜っ? 何がダメなんだろう???」というのが正直な気持ちでした。 よく分からないので、「これは部品交換しないと直らないでしょう」とごま かしてしまいました。 その場を取り繕ってしまったのは、自分の能力の低さが原因だと漠然と感じ ていましたので、罪悪感がありました。なんとなく、「縫う物が変わったら、 目飛びしなくなるかもしれない」「部品を替えたら直るんだろう」と期待も していました。 ◆ 部品を交換すればいいのではない 兄の仕事が一段落付いたのを見計らって、事の経緯と自分がしたことを報告 しました。規定値通りに合わせたが、直っていないので釜を交換しなければ いけないだろうと。 するとひとこと、「釜の剣先は研ぎ直した?」 「えっ?」 「釜の剣先をチェックして、磨き直したの?」 「いや、やってません」 兄は釜を取り外すと、釜の剣先を見せて、 「ほら、先が尖ってないだろう?」と。 その通り、先が少し欠けたようになっていました。 「やっぱり、交換しないとダメだったんだ」とホッとしたところ、兄はその 場で釜を分解し始めました。先をダイヤモンドヤスリで研ぎ直し、バフで磨 き始めました。 欠けた部分が無くなるように研ぎ直し、磨き終えたら、少しタイミングをず らして取付直すように指示されました。 「うまくいかない部品はとにかく交換すればいい」と思っていた私は、唖然 としました。 「研ぐとその分削ることになるから、あんまり形状が変わる場合はともかく、 ちょっと研いだり磨いたら直せる部品を毎回交換してたら、修理なんて依頼 されなくなるよ。」 「この工場ではゲージの細かいニットを縫うし、条件も悪いから、通常より タイミングをわざとズラさないと、目飛びは防げないよ。」 言われたように作業し終え、使ってもらうと、目飛びは無くなっていました。 ◆ 規定値だけではトラブルに対応しきれない メーカーにいた時は、うまくいかない部品は丸ごと交換して終わり。決めら れた調整値があり、規定の範囲内に収まっていればOKでした。しかし、実 際の縫製の現場では、そのままでは縫えない物がたくさんあります。 生地や糸が変わっただけで、うまくいっていた物がうまくいかなくなる、何 らかのトラブルが発生することは、けして珍しいことではありませんでした。 同じ素材の他の生地を使った時は問題が発生しないのに、ある生地を使った ときだけ、そのままではうまくいかないことがあるのです。 送り歯や押え金、針などのアタッチメント類を変えることで解決することも ありますが、少しマシになっただけということも度々です。工業用にしかな い付帯設備を付けても、調整が難しかったり、別のトラブルが発生したり…。 送り機構から根本的に違うミシンを使い、さらに部品交換や調整をしてはじ めて、キレイに縫えたこともありました。 ◆ ミシンやアタッチメント任せでは限界がある 工業用ミシンだからキレイに縫えるのではなく、縫う物に最適のミシンが選 択されていて、さらに、適切な調整や部品選択がされているから、キレイに 縫えるのだと気付きました。そのために、いろんなミシンがあり、アタッチ メントなどが多々用意されているのです。 ある程度ミシン任せにするには、それだけのことができているミシンを用意 する必要があります。1台でトラブルなく、いろんな物を縫おうと思えば、 度々調整できる知識と技術が必要なことを実感させられました。 しかも、多種多様に用意されている工業用ミシンでさえ、そのままではうま く縫えないものがたくさんあるのです。調整や仕様に限界がある家庭用製品 ならなおさらです。人による技術や工夫が、より必要なのです。 そう言えば、アタッチメントの実務研修を受けたときも同じ事を考えたこと を思い出しました。 …つづく ◆ご意見・ご質問・体験談など、どんな些細なことでもかまいませんので、 メールをください。おもしろいと思ったものは、このメルマガでご紹介し たいと思います。 → mag@shimada-mishin.com ======================================================================== ミ シ ン の 『 そうだったのか! 』 〜 ミシンの嘘・ホント、それって常識?! 【発行者】島田ミシン商会 嶋田栄司 【WEBサイト】島田ミシン商会 http://www.shimada-mishin.com/ ご意見、ご感想はコチラまで→ mag@shimada-mishin.com ※)いただいたメールは、予告なく本メルマガに掲載させていただくことが あります。その際、抜粋・編集する場合がありますので、あらかじめご 了承ください。掲載不可の場合は、その旨お知らせください。(お名前 はご希望がない限り掲載しません。また、個人の特定にいたる情報は除 いて掲載します) ◎このメールマガジンの転送は自由です。 ただし、掲載された記事の内容を許可なく転用・転載することを禁じます。 Copyright(C)2005 島田ミシン商会 All rights reserved. ▼このメールマガジンは以下の配信システムを利用しています。 『まぐまぐ』ID:0000115447 http://www.mag2.com/ ▼登録の解除は下記URLにて、ご自身でお願いします。 http://www.mag2.com/m/0000115447.htm ▼いたずらで登録されたと思われる方は、『まぐまぐ』にご相談ください。 『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ (『まぐまぐ』からのお知らせメールの登録・解除も同様です) ======================================================================== 編┃集┃後┃記┃ ━┛━┛━┛━┛ 前号で「十二国記」のことを書いところ、何人もの方にお薦め本を紹介して いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございます。 中には妻が持っている本もあったので、時間を見つけて読みたいと思います。 話は変わって、私の好きなギタリストのニューアルバムが、明日の発売予定 です。今日には入荷してるんじゃないかとワクワクしています。 で、当然この時期、たくさんの雑誌にインタビューが載るんですよね。 思いっきりミーハーなのですが、買い漁りました。 その中には、録音関連の雑誌もありまして、10年前とは比較にならないぐら い便利そうな機材がたくさん紹介されてるんです。特にハードディスクレコー ディングが魅力的で…。 よくよく考えれば昔取った杵柄で、一通りの機材なんかは持ってるんですよ ね。古くて魅力がないのは、カセットテープのマルチトラックレコーダーだ け。 「そんなことする時間なんてあるのか?」と思いつつ、どれを買ったらいい のか、資料集めをはじめました。以前勤めていた楽器屋にも顔をだして、い ろいろ聞いてこようかと思ってます。 今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 次回は、3月29日の発行予定です。 それではまた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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