──────────────────────── 2005年3月29日 第24号 ┌──────┐┌┐ │ ┌──┐ │└┘ ミ シ ン の 『 そうだったのか! 』 └┬┘ │ │ 〜 ミシンの嘘・ホント、それって常識?! ─────┴─┴──────────────────────────── ◎本メルマガは等幅フォントが最適です ▼ 目次 ●ごあいさつ ●アタッチメントを使えば誰でも縫える? ●お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ごあいさつ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いつもご愛読いただいているみなさん、こんにちは! 今回からお読みいただいているみなさん、はじめまして! 島田ミシン商会の嶋田栄司です。 数あるメルマガの中から選んでいただき、ありがとうございます。 このメールマガジンは、 これからミシンを購入したい、 ミシンのことをもっと知りたい、 もっと上手に使いこなしたい… そんなホームユーザーのあなたが、誤った知識で後悔しないように、 ミシンの嘘・ホントの解明を通して、ミシンの常識や活用のヒントをお伝 えしていきます。 このメールマガジンが何かの役に立って、今まで以上にホームソーイング を楽しんでいただけたら最高です。 気に入っていただけましたら、お知り合いに転送してすすめてくださいね。 ▼バックナンバーはこちら http://www.shimada-mishin.com/mailmag/backnum.html ──────────────────────────────────── ■ アタッチメントを使えば誰でも縫える? ──────────────────────────────────── JUKI(株)の大田原工場にいた頃、一般の方に混じって、アタッチメント技 術の研修を受ける機会がありました。 「アタッチメント」というのは、縫製技能の軽減させたり、複数工程を1工 程にするなど省力化を助けたり、フリルをつけるなど付加価値を高めたりす る、ミシンの補助用具のことです。 主に押え金や送り歯、針板、巻き具、定規類を指しますが、広い意味では縫 製機器に使う補助部品全てを「アタッチメント」と呼びます。ボタンホール 用の押えも、りっぱな「アタッチメント」です。(※1) ※1)アタッチメントの基本については、下記URLでも解説しています。 時間があるときにでも読んでみてください。 http://www.shimada-mishin.com/column/columna001.html 研修の時の先生は、当時のアタッチメント開発センター(現在は縫製研究所 内に統合されているようです)で仕事をされている方です。当時の私には、 「店にたくさん転がってたのは、これのことだったのか〜」ぐらいの感覚で した。 思った以上にカタログも分厚く、ミシン同様、どうしてこんなにたくさんの 種類があるのか、実感できない状態でした。ちゃんと理解できるのか、少し 不安になってきました。 とはいえ、白髪交じりの目の細い先生のお話は、私の知らない事ばかりで興 味深く、ついつい聞き込んでしまいました。 ◆ 創意工夫したアタッチメントでも… たくさんアタッチメントを作ってきた中には、縫っている途中で外れたり、 きちんと巻いた状態が維持できない素材に当たったりで、苦労させられるこ とが多々あるそうです。 既存のアタッチメントの組み合わせで解決することもありますが、時には、 まったく新しいアイデアを考え出さなければ解決できないことがあります。 生地端をテープでくるみながら縫いつけていく工程では、「バインダー」と 呼ばれるアタッチメントを使用します。テープをアタッチメントが折り曲げ、 事前にテープを折る必要が無くなります。加えて、針落ちまで持って行って くれるので、あらかじめテープを待ち針などで止めておく必要がありません。 工程が減ることで時間短縮につながり、ひいては縫製技能の軽減にもつなが る便利なアタッチメントです。 しかし、あるテープ素材ではどうしてもネジレが出て、しばらく縫うとすぐ 縫い外れてしまうことがありました。テープが安定して送られれば解決する と考え、テープの通り道にパチンコ玉ぐらいの重りを用意することで、テー プに微妙なテンションを与えて安定させる方法を思い立ったそうです。 その方法でネジレは減少したものの、縫い外しを解決することができません でした。 そこで、下送りミシン(布の下だけで生地を送る機構が付いたミシン。家庭 用ミシンなども下送りミシン)から、差動上下送りミシン(生地の上からも 生地を送る機構が付いたミシン)に切り替えたところ、スムーズにキレイに 縫製できるようになったそうです。 他にも、既製のアタッチメントだけでなく、特注アタッチメントの必要性や 選定・導入方法など、自身の経験談を交えながら教えてくださいました。 ◆ アタッチメントの製図・作製にチャレンジ! アタッチメント技術に関する一通りの知識を教わったところで、今度は代表 的な巻き具アタッチメント(※2)を実際に作ることになりました。 ※2)布端やテープを折り曲げたり、巻いたりするアタッチメント。 その形状から総称して「ラッパ」とも呼ばれる。 最初に使用する素材や、どのように加工するかを決めます。例えば、「目の 前の白いTCブロードの布端を10mm幅で三つ折りする(※3)」といった感じ です。 ※3)いわゆる 10mmあがりの三巻ラッパです。下記URLの画像のような アタッチメントです(画像は日邦ミシン(株)製) http://www.shimada-mishin.com/temp/mitumakirappa.jpg 次に、手で布を三つ折りして、その布を10mm幅に仕上げるのに最低限必要な アタッチメントの長さを決めたり、厚さを測って製図します。学校を出たら 一生縁がないと思っていた数学の知識を利用することになり、ちょっと感慨 深いものがありました。 後はペンチや金槌などを駆使しながら作っていきます。半田付けしたり、バ フで磨きながら形が仕上がってくるのは、なかなか楽しい物でしたが、図面 を間違っていたり、間違ったところを半田してしまったり…。プラモデルの ように簡単にはいきませんでした。 ◆ 作ったアタッチメントで試縫いしてみると… そうして何度か失敗しながら、なんとか図面通りのものを作ることができま した。あとは試し縫いして、ちゃんと10mm幅で三巻縫いができればOKです。 しかし、実際に縫ってみると、10mm幅に仕上がりません。 途中で三つ折りが二つ折りになってしまい、まともに縫えないのです。 ちゃんと図面通りに仕上げました。バフでしっかり磨いたので、ピカピカで す。取付方も間違っていません。他の方がすでに試縫いした後でしたので、 ミシンにも問題ないはずです。でも、うまくいきません。 どこが悪いのか私にはさっぱりわからず、だんだん情けなくなってきました。 バッチリできたと思っていただけにショックです…。 ◆ 私以外の人が縫うと… やっぱり、私の作り方が悪かったに違いありません。 そこで、失敗したのでもう一度作らせて欲しいと先生に話しました。 先生にラッパを見てもらったところ、きちんと作れていると言います。 そしてそのまま先生が縫いはじめると…、 ちゃんと縫えるんです!! 一緒に研修を受けていた人も試してくれたのですが、きちんと10mm幅に三つ 折りできています。でも、私が縫うとすぐ二つ折りになったり、縫い外れて しまいます。私は狐につままれたような気持ちでした。 結局のところ、私の手の添え方、布の持って行き方がうまくできていないか ら、ちゃんと縫えなかったのです。コツが掴めるまで、しばらく練習しなけ ればいけませんでした。 ◆ 技能軽減になっていない?! 実技前の講義では、アタッチメントを利用する要素には縫製技能の軽減があ ると教わりました。私がそうであるように、練習しないと縫えないのなら、 このアタッチメントは、縫製技能の軽減につながっていないのではないでしょ うか? 何となく合点がいきません。先生に質問してみました。 「最初に布を手で折って確認しただろう? 手を極力添えずに縫おうとした ら、折った布が平らになるまで、ラッパの長さが必要になるんだ。」 「そんな長いラッパが付いてたら、邪魔でしょうがないだろう? それに、 それだけの余分に材料がいるし、作るのもたいへんだ。」 「だから邪魔にならない大きさに作らなきゃならない。ちょっと練習は必要 だが、無いよりよっぽど楽に縫えるし、手前でちょっと補助してやればい い程度だからね。」 確かに、同じ事をアタッチメントなしで縫えば、もっと縫製技術が必要にな ります。さきにアイロンを掛けるなどの一手間が必要です。省力化につながっ ているのは事実です。 ここでハッとしました。 私は「アタッチメントがしてくれる」、ひいては「ミシンが縫ってくれる」 と思い込んでいたのです。何となく、楽器を販売していた頃のことを思い出 していました。 ◆ 道具は人の手があってこそ ピアノを買ったからと言って、誰でもすぐ弾けるとはいきません。 押さえるべき鍵盤を光で知らせてくれても、すぐは押さえられません。 値段も高くて、どんなに音の良いピアノを買ったとしても、 やっぱり練習しなければ弾けません。 音を出すだけなら誰でもできますが、音楽を奏でられるかどうかは別です。 ミシンだって同じです。 ミシンが独りでに服を縫ってくれるのではありません。 ミシンを使った経験がほとんど無かったからでしょうか。 いかにも機械という形からでしょうか。 中に入れておけば冷える冷蔵庫のように、「ミシンが縫ってくれる」、 「アタッチメントが縫ってくれる」と思い込んでいた自分に気付いたのです。 ミシンの事を何も知らなかった私が、何も分からず、畑違いのように感じて いたミシンが、ちょっとだけ身近に感じられるようになりました。 ところで、一緒に研修を受けた方の中には、縫製工場の方がいらっしゃり、 「君、JUKIでの研修が終わったら、ウチの工場で『縫う研修』を受けさせて あげるよ(笑)」と言われました。 自らのふがいなさを知って、真剣に考えようかとちょっぴり思いましたが、 ミシンの修理ばかりさせられそうなので辞退しました(笑) ◆ご意見・ご質問・体験談など、どんな些細なことでもかまいませんので、 メールをください。おもしろいと思ったものは、このメルマガでご紹介し たいと思います。 → mag@shimada-mishin.com ──────────────────────────────────── ■ お知らせ ──────────────────────────────────── ●NHK「プロジェクトX」で、糸切りミシン誕生秘話が紹介されます! プロジェクトXでも、やっとミシンネタが取り上げられることになりました。 お時間のある人はぜひご覧になってくださいませ。 番組テーマ:「ブランド・ミシン誕生」 世界のファッション界に革命をもたらした1台のミシンの開発 日時 :2005年4月12日(火) 21:15〜22:00 再放送日 :2005年4月13日(水) 0:15〜1:00 番組概要 :1960年代中頃、自動糸切りミシンを販売していたドイツミシン メーカーの自動糸切り機構は、完全とは程遠いものだった。 JUKIも1967年に初めて自動糸切りの試作機を出展したが、評価 は想像以上に厳しく、酷評を浴びる辛酸をなめた。その酷評を バネに、社運をかけた新たな体制のもと、現在のJUKIブランド の礎となった自動糸切りの開発が始まる。 徹底した市場調査 と解析を行い、世界中でも実現できなかった「安定した自動糸 切り機構」を開発した苦難の道程を描く。 ======================================================================== ミ シ ン の 『 そうだったのか! 』 〜 ミシンの嘘・ホント、それって常識?! 【発行者】島田ミシン商会 嶋田栄司 【WEBサイト】島田ミシン商会 http://www.shimada-mishin.com/ ご意見、ご感想はコチラまで→ mag@shimada-mishin.com ※)いただいたメールは、予告なく本メルマガに掲載させていただくことが あります。その際、抜粋・編集する場合がありますので、あらかじめご 了承ください。掲載不可の場合は、その旨お知らせください。(お名前 はご希望がない限り掲載しません。また、個人の特定にいたる情報は除 いて掲載します) ◎このメールマガジンの転送は自由です。 ただし、掲載された記事の内容を許可なく転用・転載することを禁じます。 Copyright(C)2005 島田ミシン商会 All rights reserved. ▼このメールマガジンは以下の配信システムを利用しています。 『まぐまぐ』ID:0000115447 http://www.mag2.com/ ▼登録の解除は下記URLにて、ご自身でお願いします。 http://www.mag2.com/m/0000115447.htm ▼いたずらで登録されたと思われる方は、『まぐまぐ』にご相談ください。 『まぐまぐ』 http://www.mag2.com/ (『まぐまぐ』からのお知らせメールの登録・解除も同様です) ======================================================================== 編┃集┃後┃記┃ ━┛━┛━┛━┛ 私、ギター歴21年ということになるのですが、 ここ数年、時間が取れず、すっかり腕がなまっていました。 苦手だったものは更に苦手になり、 自分の得意なことしか弾かなくなっていました。 そうすると、レパートリーが増えないだけでなく、 新しい曲にチャレンジできないんですよね。 進歩がないというか…。 そこで最近、「基礎からやり直そう!」「苦手を克服しよう!」と、 昔は退屈なのでマジメにやらなかった、運指やピッキングの練習を始めまし た。曲を弾く以前の練習です。 自分がいかに下手なのか、イヤと言うほど実感するのですが、 気長にやり始めたためか、苦手なものが少しクリアできたりして。 だから今は、練習を退屈と感じず、楽しんで続けられています。 さて、このメルマガはサイトの内容を補うつもりで書いてきました。 前提となる事実や考え方を伝えることで、もっと突っ込んだ話ができると思っ たんです。ボチボチまとめに入れる内容が出そろったかなと思ってます。 というわけで、誠に勝手ながら、しばらくメルマガの発行をお休みさせてい ただき、サイト内でまとめ直すことにしました。 実は、もう作業にかかってるんですけど、 物事を整理するのが苦手で、はかどらなくて…(汗) まだ、次のことは深く考えてないのですが、 趣向を変えて、夏頃には再開できたらと思ってます。 ひとまず次回の発行日は未定ですが、本格的に再開するまでは、 報告を兼ねて、時々発行しようと思ってます。 末永くお付き合いくださいませ。 今回も最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 それではまた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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