昔は職業用ミシンといえば工業用ミシン針仕様だけでしたが、 ポータブルに持ち運び可能な職業用ミシンが主流になった頃から、 針穴糸通し機能がついた家庭用ミシン針仕様の職業用ミシンが出てきました。
職業用ミシンに使用する工業用ミシン針(DB×1)と、家庭用ミシン針(HA×1)は、針軸の太さが違うため、互換性がありません。 工業用ミシン針仕様のミシンに家庭用ミシン針は取り付けできませんし、その逆も同様です。 どちらかの針専用になります。
ですから工業用ミシン針を使用するモデルと、家庭用ミシン針を利用するモデルのどちらがよいのか、よく質問されます。
工業用ミシン針は家庭用ミシン針に比べてバリエーションが豊富で、強度もあります。 工業用ミシン針の長所短所を挙げてみましょう。
- ◆ 工業用ミシン針の長所
- 布素材やトラブルに対応したバリエーションが豊富にある
- クロームめっきで家庭用ミシン針のニッケルめっきより強度や耐熱性がある
- 工業用ミシン店で購入する場合は、家庭用ミシン針より安い
- ◆ 工業用ミシン針の短所
- 針軸が丸いので、方向を間違って取り付けるトラブルがある
- 手芸店などではバリエーションが豊富でも、簡単に入手できない
- バリエーションが多すぎて、知識がないと選べない
では、家庭用ミシン針の長所短所はどうでしょうか?
- ◆ 家庭用ミシン針の長所
- 針軸に平取りをしてあるので、針向きを間違うことがない
- ミシンに針穴糸通し機能が備わっている
- 手芸店などで簡単に入手できる
- ◆ 家庭用ミシン針の短所
- トラブルに対応する針のバリエーションが少ない
- 針強度で工業用ミシン針に劣る
一般的な素材を縫う場合は、特に大きな差を感じることはないでしょう。 差が出てくるのは、うまく縫えないときです。 特に厚物では針強度の違いが大きく影響します。
工業用ミシン針のうちHL×5は、家庭用ミシン針と唯一互換性があります。 こちらの針を使うことで、家庭用ミシン針専用モデルでも厚物対策ができるでしょう。
工業用ミシン針の場合は更に進んで、糊が着きにくいコーティングの針もありますので、接着芯の部分を縫っても影響が出にくかったり、 同じ番手でも細めの針があったり、可縫い性がより高くなります。
何より家庭向けのミシンの中で、唯一工業用ミシン針が使えるミシンが職業用ミシンとも言えます。 職業用ミシンの特徴や能力を最大限に得たい場合は、工業用ミシン針仕様のモデルが良いでしょう。
手軽さを確保しながら、家庭用ミシンより縫えるミシンがほしい場合は、家庭用ミシン針のモデルを検討されると良いでしょう。